title

胆沢平野の水は稲を育てるだけでなく、ここに暮らす人の生活を潤し、ここに生息する生き物の環境を育んできた。

かつて、水路はさまざまな用途に使われた。

野菜を洗い、火照った馬の足を冷やし、水車を回した。そこここで子供が泳ぎ、ホタルが舞った。ところが、より効率的に用水を流すために水路が改修され、また生活排水などによって水質が以前より悪くなるにつれて、こうした水路の多目的な使い方は次第にうすれていった。そして今、ふたたび水路が見直されている。かつての水路の賑わいを取り戻すべく、様々な取り組みがなされようとしている。


  • 01
    用水の切れる秋から春にかけて、枯れた水路が寒々とする中、湧水のわく水路は透明な水を湛える。目を凝らせば、あちこちにカワニナ。翌年の夏にはホタルが舞う。
  • 02
    百姓屋敷と呼ばれた豪農の館。エグネ(屋敷林)を回り込んだ水路は屋敷に引き込まれ、瀟洒な庭園を演出する。


  • 03
    水路は何より子供たちの遊び場であった。魚を捕った。ドウジョウをつかまえた、夏になればもちろん泳いだ。ほんのついこの間までの農村の風景だった。
  • 04
    屋敷の前や裏を通る水路の一角。ここは、かつて土の付いた野菜を洗ったところ。大根、白菜、ネギなどなど。夕食のおかずに、あるいは一冬の蓄えに。


  • 05
    屋敷の回りの小さなそこかしこに置かれたラセン状の水車。実は脱穀機の動力源。胆沢扇状地を流れ下る水流はラセンを回し、脱穀機を動かして、稲穂をついた。
  • 06
    市街地を流れる乙女川。生活排水によって一度はどぶ川になった用水路が美しく甦った。汚水は分流、護岸は石積み、水際に舞台、そして水中にはコイ。水の風景がよみがえり、魚がふたたび生き始めた。


  • 07
    よみがえった乙女川に灯篭流し。柔らかな光を水面に映して、先祖の霊を見送る。
  • 08
    その昔、農作業を担い、荷物を運び、馬は欠くことのできない労働手段だった。一日の終わり、水路を流れ下る用水で、そんな馬たちの足を冷やし、体を洗った。


09
溜池の水は米作りを支え、同じ水が鳥や昆虫を育む。豊かな水たまり。生物の宝庫。こんな環境を次の世代に残したい。
back-page next-page