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1.地域の概要
2.事業の概要
3.事業計画
4.営農状況
5.換地計画
6.事業効果

1.地域の概要



(1)地域の歴史・風土
(出典:事業誌P2より引用)
 
 亀岡市には縄文時代の集落跡が確認されており、古くから人々が生活を営んでいたことが分かっています。京都より歴史が古く、奈良時代には丹波国府や国分寺が置かれ条里制による広大な農地が整備されました。京に都が置かれるようになってからは、広大な農地からの食料供給と木材を運ぶ保津川を背景に都を支える重要な役割を担ってきました。
 その後、1580年頃に本能寺の変で有名な明智光秀が丹波を平定し、当地に亀山城を築造して城下町の基礎を築きました。1869年の郡制時には伊勢の亀山との混同を避けるため「亀山」から「亀岡」に改称し、1955年に16町村が合併して亀岡市となり、現在に至っています。また、亀岡と京都嵐山の渓谷を結ぶ「保津川下り」と「トロッコ列車」は全国的に有名で西国三十三ヶ所観音霊場21番札所穴太寺や湯の花温泉も常時観光客でにぎわっています。

 一方、地区内に目を向けると、千歳車塚古墳や丹波国分寺跡など歴史的遺産が数多く存在し、古くは丹波国の中心地として栄えてきたと考えられています。このような史跡の見学や出雲大神宮への参拝、七谷川の桜などは、地域の人々の交流の場となっています。また、古くから米を中心とした農業が営まれてきており、出雲大神宮では米の作柄を占う「粥占い」や雨乞いの神事が起源とされる「出雲風流花踊り」が、請田神社では五穀豊穣を祈願して行われる「保津の火祭り」などが伝わっています。

(2) 地域の位置と地形

 本地域は、京都府の中部に位置し、亀岡盆地の中央を流れる一級河川桂川の左岸に広がる標高90m~180mの比較的平坦な水田地帯です。本事業は、この水田地帯のうち、亀岡市川東地域の馬路町、千歳町、河原林町、保津町にまたがる約640haの地域を対象に実施しました。亀岡盆地は、京都市の嵐山から山ひとつ越えたところにあり、大部分が亀岡市域です。嵐山付近からは直線距離にすれば6km程しか離れていませんが、京都縦貫自動車道では約10kmの距離にあります。また、この盆地は、大昔、湖だったといわれています。亀岡と嵐山の間にある保津峡を二人の神が切り開いて水を流したという伝説も残っており、湖だったことを示す地層も明らかになっています。

(3) 地域の社会・経済

 人口は、平成17年の国勢調査によると、亀岡市の総人口は93,996人で、府内では京都市、宇治市に次いで3番目となっています。また、昭和60年から平成17年までの20年間で18千人増加していますが、平成7年以降はほぼ横ばいで推移しています。  
 また、亀岡市の産業別就業人口は、45,524人となっており、このうち、農業就業者数は2,150人で、4.7%を占めています。内訳として、第1次産業(農業)は2,150人、第1次産業(その他)50人、第2次産業13,066人、第4次産業30,258人となっています。

(4) 地域の農業

 亀岡市では、水稲を中心にビール麦の二条大麦、大豆、大納言小豆、京野菜などの多様な農業が展開されています。また、古くから畜産も盛んで、乳牛、肉牛、養豚、養鶏などの振興に力を入れています。
 亀岡市の農業生産額は53億6千万円(平成18年)で、府内4位となっており、京都府農業の重要な役割を担っています。

(5) 経営耕地面積・作付面積

 亀岡市の経営耕地面積は2,072ha(平成17年)で、このうち水稲が96.8%を占めており、水田率が高いのが特徴です。このことから、麦、大豆などの土地利用型作物や京野菜などの高収益型作物の生産基盤として、水田の活用を推進していくことが求められています。  
 作付面積は、2,170ha(平成18年)で、水稲が1,740ha、二条大麦75ha、かぶ35ha、大豆30ha、小豆30haとなっています。
 本事業を実施した関係4町の農家数は、亀岡市全体の概ね1/4程度で推移しています。また、第2種兼業農家が約85%、経営規模が1ha未満の農家が約75%と高い値で推移しており、亀岡市全体もほぼ同様の傾向を示しています。

(6) 農地整備の状況

 兼業化の進展、若者の農業離れと担い手不足、農村の高齢化、日本全体にもいえることですが、亀岡の農業も、このような状況を背景に一層の効率化が求められることになりました。小さな水田や形の整っていない水田では、農業機械、特に大型の機械はその機能を十分に活かせません。また、多くの農家では、水田があちらこちらに散らばっていたため、作業の効率化にも限界がありました。そして、農業の効率をさらに高めるためには、亀岡で古くから開墾されてきた水田、つまり、小区画で分散した水田を再編・整備しなければなりませんでした。
 こうした状況のなか、亀岡市では昭和50年代中頃からほ場整備事業が行われてきましたが、国営事業に着手した当時の農地整備率は24.4%と低く、本市の農地整備は大きく立ち遅れていました。特に、桂川左岸に位置する川東地域は、水害の常襲地域ということもあり、比較的平坦で広大な水田地帯でありながら大部分が未整備のままでした。

2.事業の概要



 本地区は、京都府の中部に位置し、亀岡盆地の中央を流れる一級河川桂川の左岸に広がる水田地帯である。水稲を中心に、麦、大豆等の営農が展開されていたが、①条里制の名残から大半の農地が小区画であったこと、②水害の常襲地帯であり、水害に対する危険を避けるため農地の所有が分散していたこと、③歴史的遺産が多く、埋蔵文化財発掘調査に多大な費用を伴うこと等から、大規模なほ場整備を行うことができなかった。
 このため、効率的な機械利用や農作業の効率化を図ることが困難であり、用排水路、農道の多くが土水路、未舗装で、水管理等に多くの時間と労力を要しており、区画整理事業を実施する必要性は大きかった。一方、平成10年、桂川上流に日吉ダムが完成し、桂川の河川改修事業が行われ、大規模な水害の発生が抑えられたことから、区画整理事業の機運が高まった。このような状況から、本事業は、効率的な土地利用と生産性の高い農業基盤を形成するため、既耕地を再編する区画整理と農地造成(地目転換)を一体的に施工し、担い手農家への農地利用集積と集落営農の展開により、経営規模の拡大と経営の合理化や、高収益作物の導入を図るとともに、土地利用の整序化を通じ農業振興を基幹とした地域の活性化を図ることを目的として実施されたものである。

3.事業計画



(1) 当初計画

 国営農地再編整備事業「亀岡地区」は、地区調査を平成6年度から平成11年度までの5ヶ年間、その後平成13年1月6日亀岡農地整備事業建設所を開設、同年3月22日事業計画が確定した。
 当初計画は、区画整理516ha、道路(幹線道路3.4km、支線道路A32.6km、支線道路B17.7km)、用水路(幹線用水路9.0km、支線用水路56.6km)、排水路(幹線排水路6.3km、支線排水路55.8km)、農地造成5ha、道路(支線道路B0.7km)、用水路(支線用水路0.7km)、排水路(支線排水路2.9km)、事業工期平成12年から平成19年度、総事業費14,000百万円(区画整理13,893百万円、農地造成107百万円)。

(2) 第1回変更計画

 変更理由としては、①営農者の意向等による編入や整備意欲の減退による減少など受益面積の増減、②埋蔵文化財の分布や出現状況に応じた埋蔵文化財調査の追加、③埋蔵文化財保護のための工事計画の見直しに伴う事業費の変動等。
 変更計画は、区画整理503ha、道路(幹線道路3.4km、支線道路A18.3km、支線道路B47.8km)、用水路(幹線用水路9.2km、支線用水路63.6km)、排水路(幹線排水路6.3km、支線排水路61.9km)、農地造成6ha、道路(支線道路B0.3km)、用水路(支線用水路1.2km)、排水路(支線排水路0.6km)、事業工期平成12年から平成22年度、総事業費17,500百万円(区画整理17,374百万円、農地造成126百万円)、変更計画確定は平成19年8月15日。

(出典:平成30年度 国営農地再編整備事業「亀岡地区」事後評価資料より引用)

(著者が現地で撮影)
(著者が現地で撮影)

4.営農状況



【作付面積】

(単位:ha)
(出典:平成30年度 国営農地再編整備事業「亀岡地区」事後評価資料より引用)

5.換地計画



 (1) 基本的な考え方

 本地区では、区画整理と農地造成を実施することにより、生産基盤の整備を図り、優良農地の確保と併せて地域の土地需要に対応した非農用地を計画的に設定し、併せて土地利用の再編整備を進めるための非農用地創設を行います。
 換地計画においては、育成すべき経営体に利用集積を図るよう換地と利用権設定を一体的に進め、農業構造の改善を図り、生産性の向上を推進します。

 (2)換地区の設定

 地理的な立地条件、用水系統及び集落界を考慮し、計画的な換地処分を図るため11換地区を設定します。


 (3)換地計画樹立の基本方針

① 従前の土地の地積の基準
 換地交付の基準とする従前の土地の地積は、土地改良事業計画決定の日の登記簿地積とします。
 ただし、上記の日から3ヶ月以内に測量士、測量士補又は土地家屋調査士の測量した実測図及び隣接所有者の同意書を添付して申し出があった場合には、その申し出があった地積とします。

② 農用地集団化の方針

(出典:事業誌より引用)

③ 用途別予定地積
非農用地として、集落排水施設、市町村道等の用地を創設換地することができました。

(4)土地の評価及び精算方法

① 評価の方法
 土地の自然条件及び利用条件について、標準地比準方式により評価委員が各筆の調査を行います。
 標準地比準方式:土地の自然条件、利用条件等の評価項目について、最も良い従前の土地を標準地として選定し、その土地価格(1点1m2当り単価)を定め標準地と比較しながら個々の土地を増減点で採点評価します。

② 清算の方法
 各人の従前の土地を基準として比例地積清算方式(換地地積比例)とします。
 比例地積清算方式:土地改良事業による増加額を従前の土地の地積に比例配分して換地交付基準額を算定し、個々の土地の換地評定価額と比較して清算します。

③ 換地の実施経過

(出典:事業誌より引用)

6.事業効果



(1)国営事業の事後評価

 国営農地再編整備事業亀岡地区は2011年度(平成23年度)に事業完了したことを受け、2018年度(平成30年度)に事後評価を実施し、その結果を8月に公表しています。その中で総合評価と技術検討会の意見は、

【総合評価】
① 集落営農の展開
 本事業の実施により農地の大区画化、パイプラインの設置、大型機械化体系が確立され、農業経営の合理化を図ることができる生産性の高い農業基盤が形成された。
 現在、担い手への農地の利用集積が進んでいるものの、今後、農業従事者の高齢化による担い手の減少が懸念されることから、これら整備した農地の有効利用を図るためには、新たな担い手の育成・確保が求められる。
 このような中で、本地区では、本事業を契機に設立された集落営農組織による集落営農が大きく展開している。
② 産地収益力の向上
 本事業の実施により農地が大区画化・汎用化されたことで、水田の畑地化が可能となり、本地区全体の農業生産額は倍増している。
 特に、営農を推進するに当たり、本事業を契機に設立された集落営農組織等が京都府、亀岡市等の関係機関と連携し、京のブランド産品である「大納言小豆」、「丹波黒大豆」、「九条ねぎ」、「賀茂ナス」等の高収益作物への作付転換が積極的に図られたことにより、産地収益力が向上している。
 また、等級による価格差が大きい小豆については、精度の高い選別機の導入により、更にブランド化を進め、収益力の向上が図られることが期待される。
③ 事業実施による生活環境等の変化
 本事業の実施により創設された非農用地は、農業集落排水施設や府道バイパスに活用され、地域住民等の生活環境の改善に寄与している。
 また、整備された景観・環境配慮型の用水路は、農村協働力を生かした活動のもと適切に維持管理され、農村の美しい自然環境の創造に寄与している。
④ 国営緊急農地再編整備事業「亀岡中部地区」の着手
 本事業による成果が高く評価されたことで、桂川対岸の未整備で小区画な農地を有する近隣地区において区画整理への気運が高まり、平成26年度より、新たに国営緊急農地再編整備事業「亀岡中部地区」が実施される等、亀岡市における農業振興施策に大きく貢献している。
⑤ 事業効果の継続的な発現及び各種課題への取組の推進
 上記の事業効果を継続的に発現させていくためには、土地改良施設の役割や重要性を広く啓発し、適切な維持管理、長寿命化対策や計画的な更新を行うとともに、関係機関による継続的な担い手の育成・確保への支援及び高収益作物の生産・販売への営農・経営指導が望まれる。

【技術検討会の意見】
 本事業により、農地の大区画化、農業用用排水の整備、パイプラインの設置、大型機械化体系の確立による安定的で生産性の高い農業基盤が形成されたことから、本事業を契機に設立された集落営農組織による営農が大きく展開している。
 特に、集落営農組織が京都府や亀岡市等の関係機関と連携して、積極的に小豆、京野菜等の高収益作物を導入したことにより、本地区の農業生産が大きく進展していることから、こうした関係機関との連携強化による産地づくりについて、他地区において新たな事業実施を検討する上で、模範となっていくことを期待したい。
 なお、このような事業効果を継続的に発現させていくためには、農道及び農業用用排水施設の役割や重要性を広く啓発すること、土地改良施設の維持管理、計画的な長寿命化対策や更新を行い、適切に維持管理していくこと、関係機関による継続的な担い手の育成・確保への支援及び高収益作物の生産・販売への営農指導を行うことが望まれる。

(2)近年の状況 

① 平成29年時点の作付面積及び生産量の状況

(出典:平成30年度 国営農地再編整備事業「亀岡地区」事後評価資料より引用)

② 農事組合法人の設立状況

農事組合法人(ほづ)
平成17年6月設立

(出典:著者が現地で撮影)
農事組合法人(河原林)
平成25年1月設立

(出典:著者が現地で撮影)
農事組合法人(きたや)
平成29年4月設立

(出典:著者が現地で撮影)



引用文献

1.亀岡農地再編整備事業誌  近畿農政局
2.農林水産省 農村振興局ホームページ