本地域は兵庫県のほぼ中央部に位置し、比較的温暖な農地に適したところであるが、農業用水の殆どが旧来の効率の悪い小渓流や小ため池に依存するため、平年においても相当の水不足が生じる常襲かんばつ地帯であったことから、安定した水源を確保するとともに農業経営の規模拡大と生産性の向上を図ることが地域の最大の課題であるとして、基幹的な農業水利施設を整備する国営事業が、昭和42年事業実施となり、24年の歳月と397億円の事業費を投入して平成2年度に完了した。
事業実施の主な経緯は次のとおりである。
・昭和34年4月 直轄調査地区採択(調査年度34~39)
・昭和40年4月 全体実施設計開始(全計年度40~42)
・昭和42年10月 国営土地改良事業着工
・昭和43年4月 加古川西部土地改良区設立
・昭和48年3月 糀屋ダム築立開始
・昭和53年9月 糀屋ダム完成
・昭和60年3月 高田頭首工完成
・平成元年3月 杉原川揚水機場完成
・平成2年10月 広域農業水利施設総合管理事業発足
・平成3年3月 国営土地改良事業完了
(1)事業計画の変遷
①土地改良法に基づく事業計画の確定
昭和34年調査計画から、昭和42年全体実施設計まで約8年を要しており、土地改良法第85条申請(昭和42年8月25日)より、第87条計画確定(昭和45年8月14日)まで3年要している。
②特別会計事業への振替
昭和51年土地改良法の一部改正等に伴い、昭和52年2月21日申請、昭和52年4月1日特計振替となった。
③第1回土地改良事業変更計画
当初事業計画に基づき事業着手してから23年が経過し、社会、経済及び農業情勢等の変化に対処するため、受益面積・用水計画・施設計画及び工法変更に伴う事業費を見直すことになり、計画変更が必要となった。平成2年12月変更計画概要書(案)の公告、平成3年3月12日変更計画確定した。
(2)事業計画の概要
①受益面積
加古川の中流右岸に広がる播磨平野中央部に位置し、加西市他3市2町に跨っており、その地 積は水田4,000ha(内加西市3,480ha)、畑220ha、山林80haその他10 haの計4,310haである。
②事業計画の目的
加古川の中流右岸に広がる加西市を中心とした洪積台地は、瀬戸内式気候に属し年間降水量も少なく、河川も小さいため、約600個のため池と90か所の井堰によりかんがいを行っているが、水源が不安定であり、恒常的な水不足に悩まされている。また、その用水系統は錯綜しており水管理に多大な労力を要している。
このため、水田約4,000 haへの用水補給と既畑220ha(内普通畑200ha、樹園地20ha)、造成畑90haへの新規用水確保を行なうとともに、関連事業によるほ場整備等の基盤整備を行い、機械化体系の拡充と土地利用率の向上等により農業経営の安定と近代化を図るものである。 また糀屋ダム、導水路等の水源基幹施設は、西脇市周辺の工業用水として日量30,000?を供給する兵庫県水源開発との共同事業である。
(3)営農計画
水稲を中心に野菜類、飼料作物等の導入により水稲複合経営を指向し、併せて農地造成により既存農家の経営規模の拡大を図り、「水稲+果樹等」の営農を確立するものである。田畑においては、かんがい施設の導入により収量の安定的増大及び品質の向上等による、生産性の向上と畑作経営の安定を図るものである。
(4)土地改良事業変更計画の大要
①主な変更理由
道路、河川等の他用途その農地転用等及び、農業情勢の変化に伴う農地造成の地区除外による受益面積の変更で、用水改良は4,120haから3,588ha、畑地かんがいは451haから201ha、農地造成は279haから60ha、幹線道路は2.7kmから1.4 kmに縮小した。 事業費は、労賃物価の変動、事業量の変更、工法変更、水管理施設の新設他にともない5,489百万円から39,700百万円に変動した。
②主な変更事項
西1号幹線水路の通過に伴い、姫路市の一部を新規編入した。事業別面積の変更は次のとおりである。
かんがい方式については、農作業は大型機械化の進出と共に水稲栽培技術の進捗に伴い、かんがい期間は、早期化、長期化した。また米の生産過剰による水田抑制に対応して田畑輪換による畑作物を導入することにより、かんがい方式を実情に合わせ変更した。
③水源計画
水利用計画の見直しに伴い、用水計画にかかる糀屋ダム・各頭首工・水路等の諸元も一部変更 した。
④道路計画
受益面積の変更減等に伴い、幹線道路延長は2,684mから1,400mに、支線道路は10,037mから4,700mに縮小された。
⑤総事業費
総事業費(受託を含む)変動は次のとおりである。
(5)用水計画
①計画基準年
昭和25年から44年の20ケ年の水収支計算を行い、ダム必用容量2/20位年にあたる昭和37年を計画基準年とした。これは水文資料からみても妥当である。
②かんがい方式と計画単位用水量
かんがい方式は、水稲は湛水かんがい(6月6日~9月20日)、畑作物は畝間かんがい(通年) 果樹は散水かんがい(通年)である。
水田の単位用水量は、1つの水収支計画ブロック内に幾種類かの土壌タイプが存在するため、 水収支計算ブロック毎に加重平均水深を算定する。代かき用水は3タイプに区分した。
畑の単位用水量は、TRAM30mm、間断日数5日で日消費水量は1.5~6.0mmである。
③計画用水系統
④水収支計算
水収支計算方法の主要なものは次のとおりである。
・計算ブロックは概ね支線単位で、かつ井堰掛21、ため池掛23、直接掛13計57ブロックに 分割して行う。
・頭首工利用計算は、柳、赤坂の順に収支を行い、両頭首工を利用してもなお不足する量がダム依存量となる。また各地点の取水下限値のほか下流加古川本川流量チェックポイント(板 波、国包)の規制を受ける。
・ダム収支計算は、カット可能数はダム自流域・大屋頭首工・高田頭首工各地点の取水下限値のほか、加古川本川流量チェックポイントの流量規制を受ける。
⑤水収支計算結果
計画基準年における、年間用水量は次のとおりである。
(1)糀屋ダム
①ダムの概要
1)ダムの諸元
2)堰提図
3)工程計画
②ダムの設計
1)計画洪水量の決定
仕出原川流域のダムサイト付近には、長期にわたる雨量及び流量の観測資料がないため、洪水量算定にあたっては下流中町の降雨記録に基づき計算を行う。
2)ダムタイプの決定
糀屋ダムの貯水池は、流域のほぼ中央を南北に流下する仕出原川に主ダム、東側丘陵部の徳畑、茂利地点の小規模な凹部を締め切る2ケ所の副ダムにより構成される。
ダムタイプの決定は、ダムサイト周辺に分布する築堤材料の性質、基礎の地質、地形及び工事費などを検討し、糀屋及び茂利ダムは中心コア型フィルタイプ、徳畑ダムは傾斜コア型フィルタイプとする。
3)堤体規模の決定
糀屋ダムの諸元を次のとおり決定する
4)基礎処理の設計
基礎掘削にかかるコアトレンチは、風化帯は全て掘削し新鮮岩にコアの基礎を置くことが 必要と考え、掘削深度はダムサイト左岸で最大3.0m、河床で最大10.5m、右岸4.5mとなっ た。
カーテングラウトはダム軸より上下流それぞれ0.75mの位置に2列、河床部は更に上下流 1.5m、深度10mの2列の補助カーテンを設ける。標準孔配置は2.0mとし、設計深度は15 m~59m、グラウテイング数量はグラウト孔14,865m、テスト孔1,235m計16,100mである。最高注入圧力は第4ステージ(15m以下)で8.0kg/cm
2。
5)堤体の設計
・ゾーン別に使用される材料は次のとおり
コアゾーン:下流土取場に分布するS,Mグループの不透水性材料
トランシジョンゾーン:河床堆積層及び原石山掘削細粒岩材料
ロックゾーン:原岩山掘削岩材料の比較的粒径の大きなもの
・安定計算については、フィルダム基準改訂に伴い一部修正した。
・設計数値の決定と安全率
・堤体からの漏水量は、215m3/日で全貯水量の0.002%(一般にかんがい用ダムでは、0.05% が許容漏水量限界)で十分許容される。余盛は0.58m+0.2m=0.8mとする。
6)取水施設水理及び構造計算
取水形式の選定はその特性から大半が補給水であり、直接かんがいする量は16%にすぎな いことから、貯水池よりの放流水温が現況河川水温より低くなければ被害はないとして選定した。取水方法は越流式とオリフイスについて検討し、ゲート径間を2.50mとした。
取水塔形式は、壁構造は円形とし、柱構造は3,4,6及び8角で検討し、構造計算上最も安定す る4本の柱を主構造に周囲を連結した柱状構造とした。量水形式は損失水頭のない維持管理の容易な、価格も比較的安価で、精度の高い超音波流量計とする。
高圧放流バルブ形式は、経済性と維持管理上も優れているジェットフローゲートを計画する。
ダム貯水の緊急放流は、貯水全量を放流時間が7日以内に放流可能にすることを条件として φ1800,450mm各1本を採用する。
③ダムの施工
1)築堤施工計画
○仮設備計画
工事用の道路計画は堤体乗り入れ道路としてEL130m、EL145m、EL162mの標高に幅 員8.0m道路を計画し原岩山、土取場に連絡するよう計画する。
○ダム本体築立計画
各土取場の性状は次のとおり。
(コア)
A地区の材料は、透水係数は10-7オーダーが充分期待できるが、力学的諸性質φ、Cに乏しく乾燥密度も安定計算値1410kg/m
3に近い土質である。また、土取場の含水比が非常に高いため周囲に排水溝を設け含水比を下げるように心掛けねばならない。採取予定量5万m
3、面積約2.0ha、B地区の材料は、力学的・物理学的諸性質はコアー材料として優れているが透水性の確保は浸潤側の管理となる。礫率の管理にも最高礫率50%として細粒化に心掛ける必要がある。素堀の側溝を設け、含水比、土質の均質化を図り、採取地にストックするものとする。
コンタクトクレーは、A地区の材料を雨水による赤水の被害を最小にするため渇水期に採取する。
撒出し厚さは20cm,転圧は振動式ローラー(ボマック80t)で6回、コンタクトクレーはランマー100kg級による。
(トランジション)
床堀土流用土の材料は、半透水性の分類に属すため、乾燥側を目標に透水係数10-4オーダーが得られるように留意する。
原石山の材料は、ベンチ造成まえに約30,000m
3を採取する。材料としては良好。C地区の材料は、材料としては良好であるが、地下水位が高いため、一次ストックを行い含水比の低下を図る必要がある。
(各土取場の性状及び採取計画は次のとおり)。
撒出しはD85級ブルトーザーで40cm、転圧はタイヤローラー28tで12回。
(ロック材)
原石山にベンチを造成し採取する。
細岩(0.4m)大岩(1.0m)を撒出し、締引式振動式平滑ローラー(13.5t)で3回転圧する。
(フィルター)
瀬戸内海家島沖で採取できる砂を高砂地区で水切りし、現場に搬入する。撒出し厚さ 0.4m転圧機械は振動式ローラー7t(BOMG)3回とする。
2)施工管理計画
設計条件、施工管理基準は次表のとおり。
(コア用土)
迅速管理試験法によりD値95%を行う。含水比の評定は次表のとおり。
(トランジション)
礫率70%を限界として、礫率70%以下の場合はD値で管理を行い、礫率70%以上の 場合はγd=2.0t/m
3以上を持って管理を行うものとする。含水比の評定は次表のとおり。
(細岩)
乾燥密度で管理を行うものとして管理値はγd=2.0t/m
3以上とする。乾燥密度は縦横 0.6m×深0.6mの穴を掘り砕石置換で求めるものとする。
(大岩)
乾燥密度で管理を行うものとして管理値はγd=1.9t/m
3以上とする。乾燥密度を求める 穴の大きさは縦横1.2m×深0.8mとする。
3)グラウト施工計画
基礎岩盤は流紋岩質凝灰角礫岩で全般的にかなり硬質緻密であり比較的割れ目も少ない。 透水度は概ね2~50ルジオンの範囲にあり亀裂、割れ目の頻度にほぼ支配されている。着岩 10m以深の基礎岩については1~10ルジオン値と小さく、大半が1~5ルジオンで透水性は低 いことから、カーテングラウトの最深孔(パイロット孔×孔)の深さは30m、主カーテン膜 は20m、主孔の上下流に補助孔として10mをコンソリデーショングラウトを兼ねて設けその 漏水に備える。改良の目標ルジオン値は2以下とする。
4)施工管理結果
各ゾーンの盛土管理結果は次表のとおりである。
④ダムの基礎地盤の検査
ダム基礎地盤の検査は、昭和49年1月~昭和58年11月まで7回実施され、検査ごとに詳細な 処理指示があった。
⑤試験湛水に必要な技術的検討
1)概要
糀屋ダムは昭和49年に工事着手し、昭和53年7月までには本堤部の工事が完了し、茂利、 徳畑両副ダムは昭和58年までに盛土工事が完了している。その後は、付替え工事を施行する と共に堤体試験湛水にむけて調査・解析が進められた。
年度別の主な調査・解析項目は以下のとおりである。
2)堤体安定解析
○円弧スベリ法及びウエッジ法による安定性に対する検討。
○貯水圧を考慮した変形解析
最大主応力(δ1)、最小主応力(δ2)は各要素とも貯水することにより、僅か変化 (δ1は0.3~0.4㎏/cm
2大きく、δ2は0.02 ~0.05小さく)するが貯水による影響は殆ど 受けていないと判断でき、コア及び河床砂礫層内の主応力は引張応力も発生しておらず、 異常箇所は見られなかった。
3)湛水計画
ダム堤体右岸部に設けられた仮排水路暗渠部(EL125.00m)の閉鎖を行うことにより、湛水を開始する。湛水試験は初期水位EL125.00mから上昇させ、任意の水位段階で水位を確保し、満水位EL159.00mに達した後、最低水位EL130.00mまで水位下降し、所定の工程を終了する。
水位の上昇速度は1.0m/日、下降速度は0.5m/日とし、上昇、下降、一定の水位過程では、ダム本体及び貯水池の挙動を確認するとともに諸施設の総合的な機能点検及び調整試験等を実施 し、試験を完了させる。
(2)杉原川揚水機場
①基本計画概要
糀屋ダムは自己流域が狭少であるため、杉原川高田地点に高田頭首工を設置し、河川流量1.95 m
3/s以上の場合、最大4.0m
3/sまでを取水し杉原導水路に揚水するものである。
高田頭首工・杉原川揚水機の概要は次のとおりである。
②高田頭首工
1)計画の概要
頭首工本体及び取水設備の設計計画諸元は次のとおりである。
2)設計の方針
取水設備は杉原川流が1.95m
3/s(既設左岸取水口取水量1.00m
3/s河川放流量0.95m
3/s)以上有る場合のみ取水し、揚水ポンプにより糀屋ダムに送水する。このため常時だけでなく洪水時においても取水を行う計画である。
頭首工は既存の高田井堰を撤去し新設の高田頭首工を構築するものであることから、定め られた河川改修計画を十分考慮し構造令に適用する諸条件で検討を行う。
3)取水設備の設計
設計条件より取水れ水深は0.49mで最大4.0m
3/sの取水が可能な構造でなければならない。また既存の左岸側取水は常時取水が必要であるため、本計画の取水工から右岸取水を行う場 合は両岸取水となり、取水口の流入型式は取水深さが0.49mと小さいことから越流式とする。
導水路は取水口及び下流揚水機場の設置条件を考慮し、トンネルタイプとし、その諸元は 内径1,800mm、勾配1/750、流速1.63m/sである。
4)頭首工の設計
位置は現高田井堰の位置とし、現況施設を改修、築造する。型式は取水管理上有利なゲート式引き上げ式とする。
洪水吐の縦断計画は図のとおりであり、幅員は引き上げ式ゲート径間17.50m
2門である。
③杉原川揚水機場
1)施設計画
ポンプ型式は、将来の補修管理の容易さ及び施設費の有利性から横型とする。ポンプ台数 は揚水計画での変化量は0.2~4.0m3/sと大きく揚水量運転数とポンプ運転日数(組み合わせ) 並びに危険分散等と総合的に判断し、大ポンプ2台口径φ800全揚水量2.666m3/s、小ポンプ2台口径φ600全揚水量1.332m3/sとし、吸込方式は、現地条件、経済性から押込み式とした。原動機容量は次のとおりである。
2)吐出管路の設計施工
杉原川揚水機場台1期工事として、揚水機場よりずい道までの延長95.43m、斜面勾配45° ~39°を口径1350mmK型ダクタイル鉄管5種管(設計圧力P=8.5㎏ f/cm)、曲管部は鋼管 を使用し、最大4.0m3/sの補給水を揚送するもので、この工事は昭和56年9月18日に着手し、57年度末日に塗装工事を残し管の据え付け工事を完了した。
(3)その他の頭首工
①計画の概要
糀屋ダムは自己流域が狭少であるため、杉原川高田地点に高田頭首工、野間川大屋地点に大屋 頭首工を設置し、糀屋ダムに導水することものである。また合理的な水利用を図るためダムから 大幹線水路が野間川、大和川を横断する附近に赤坂頭首工及び柳頭首工を建設するものである。
②頭首工の概要
大屋・赤坂・柳の各頭首工の概要は次のとおりである。
2)吐出管路の設計施工
(4)東西分水工
①水利計画概要
糀屋ダムからのかんがい用水の供給は大幹線を通じ、途中の赤坂、柳両頭首工からの取水と併 せて東西分水工に送水され、東・西幹線水路及び芥田川に分水される。
なお設計流量は次のとおりである。
大幹線水路 Q=4.05m3/s
東幹線水路 Q=1.84m3/s
西幹線水路 Q=2.17m3/s
芥田川分水 Q=0.04m3/s
(最大流量の0.046m3/s)
②構造設計の概略
今後の農業用水利用方法が水田用水のみならず、畑地用水を含めて多様化することが考えられ ることから、よりきめ細かな配水管理が必要であり、水源側の送水操作と無関係に独立した操作 を可能となる。このため大幹線水路の到達の遅れに起因する無効放流対策を加味した分水計画と した。
(5)幹線支線水路
①計画の概要
本事業の基幹水源は、加古川水系野間川上流に位置する多可郡中町糀屋新田に貯水量13,500千 m3の糀屋ダムを建設する。糀屋ダムは自己流域が狭小であるため、杉原川高田地点に杉原揚水機 場を野間川大屋地点に大屋頭首工を建設し、この2ケ所から導水して水量を確保している。 また、合理的な水利用を図るためダムからの大幹線水路が野間川、大和側横断する附近に赤坂 頭首工及び柳頭首工を建設し、それぞれ豊水時には取水、渇水時には放流する。大幹線水路は殆 どがトンネルであり加西市に入り、東西分水工で加西市の東部を東幹線水路、西部を西幹線水路 に分水し高位部をトンネル、サイホン等により地区を取りまき、地区内を樹枝状に計画する支線 水路により地区内に配水する。
②路線別受益面積及び最大通水量
(6)農地造成
①計画の概要
当初計画においては、279haの農地造成を計画していたが農業情勢の変化に伴い、営農意欲の 強い団地を対象に見直したため、7団地地区面積87.7haと大幅に減ずることになったが、造成さ れた団地は果樹(ぶどう)、野菜(大根)等で一大産地を形成している。
②造成面積及び換地計画における予定地積
農地造成の団地別面積は次のとおりである。
(7)水管理計画
①広域農業水利施設総合管理
1)事業目的
加古川水系にかかる東条川地区、加古川西部地区、東播用水地区の各国営土地改良事業で 造成された基幹水利施設は各々の地点の取水制限流量の他、加古川の流量基準点(加古川本川板波、国包地点)の取水制限流量によっても規制されており、また下流には他事業の水利施設もある。
一方、各基幹水利施設の水管理は各々の利水運営を適正且つ公平に行い、しかも水源の有効活用を図る必要があることから、ダム、頭首工、揚水機場、導水路等の基幹水利施設を一元的及び総合的に管理するものであり、その目的は次のとおりである。
・各ダム等の水管理を集中し、効率的な体制をとることによって管理費用の節減を図る。
・管理対象とする各施設を、諸規定に従い正常な機能が発揮出来るよう維持管理する。
・高度な技術的管理を行い、洪水時におけるダムからの放流に伴う下流の安全対策に万全を期す。
2)事業概要
管理対象が広域に亘るため、総合管理所(呑吐ダム地点に設置)のほか3ケ所に管理所(鴨 川・大川瀬ダム、川代ダム、糀屋ダム)を設置している。
各地区で管理する主要な施設
・東条川地区・・・・・・鴨川ダム、鴨川導水路
・加古川西部地区・・糀屋ダム、頭首工(高田、大屋、赤坂、柳)、杉原川揚水機場、 導水路(杉原、大屋、柳)、幹線水路(大、西)
・東播用水地区・・・・ダム(呑吐、大川瀬、川代)、導水路(川代、大川瀬)、中央幹線水路
②地区内水管理
管理目的は、地区内の水使用秩序の形成とパイプライン用水系統の適正な通水による施設の保全のため、主要分水地点の水位又は流量を地区内水管理事務所で監視し、幹線水路管理規定に基づき配水管理を行う。
③配水管理
1)国の管理
主水源の対象施設は、糀屋ダム及び柳、赤坂頭首工の管理であり、広域農業水利施設総合管 理の一環として、糀屋ダム管理所において集中管理を行う。
2)土地改良区の管理
土地改良区は、東西分水工及び畑分水工から、各幹線、支線水路の末端までの管理を行う。
④幹線水路管理規定
幹線等施設の時期別最大分水量、分水量の制限、用水補給及び緊急放流について規定されている。
当該事業により築造された施設は、完成後約30年を経ている。糀屋ダム・杉原揚水機場等の基 幹施設は、国が実施する広域農業水利施設総合管理事業により、また東西分水工からの各幹線・支 線水路は、土地改良区による維持管理適正化事業等により、計画的且つ適正に管理されてきた。
今後の取組みとして、土木構造物は、定期的(5年程度)に機能診断を実施し、変状箇所の経過観 察及び性能低下曲線の補正を行い、一方機械及び電気設備は、年点検により状態を頻繁に監視する など、持続的に施設機能を最大限発揮させるために、更なる維持管理の適正化が検討されており、受益者、兵庫県、関係市町の意向を踏まえつつ、整備内容や更新時期の調整を図りながら実施されるものである。