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1.地域の概要
2.営農の近代化と国営西濃用水土地改良事業
3.施設の老朽化と西濃用水第二期事業
4.水の恵みを明日へつなぐ

icon 1.地域の概要



1-1 地域の概要と西濃用水
 岐阜県の南西部、揖斐川沿いに広がる西濃地域は、古くから中山道をはじめ美濃路、伊勢街道などが行きかう交通の要衝として栄えてきました。
 西濃用水地区は、この地域の大垣市、養老郡養老町、不破郡垂井町、安八郡神戸町、揖斐郡揖斐川町、大野町及び池田町の1市6町にまたがる水田5,249ha、畑93haの地域で、水稲を中心に水田の畑利用による小麦、大豆、飼肥料作物、露地野菜を組み合わせた土地利用型農業を展開する岐阜県内有数の農業地帯です。

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西濃用水地区

1-2 北部及び西部の概要~扇状地とマンボ~
 地域の北部及び西部では、条里制による土地の整備が早くから進められ、今でもその名残を地名や遺構に見ることが出来ます。  この地域は、揖斐川の支流の粕川や相川によってつくられた扇状地で、かんがい用水が地下に浸透しやすいため、水田の水持ちが悪く、川の水も少ないことから、旱魃の常襲地域として大変な苦労をしてきました。  また、西部の垂井町などでは、水を得るためにマンボと呼ばれる横井戸を掘ってかんがいに利用してきました。

 下の図と写真は、マンボの構造と樽井町に今も残るマンボの出口です。

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マンボの構造
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マンボ(垂井町)


1-3 南部の概要~水の都と輪中~
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松輪中の航空写真(S.22頃)
 地区の南部は、大垣市が「水の都」と呼ばれるなど、豊富な地下水に恵まれ、飲料水のみならず、工業用水や、かんがい用水としても広く利用されてきました。
 水の都は、一方で洪水の常襲地帯としての歴史があり、屋敷や田畑を守るために周囲に堤防を巡らせた「輪中」が作られてきました。
  右の写真は昭和22年頃の空中写真です。川沿いに伸びる輪中堤と細長く仕切られた水田などが眺められます。
 輪中の屋敷は、下の写真のように石垣を高く積みその上に水屋を造り、軒裏には洪水に備えて舟が吊り下げられていました。
 また、輪中では、稲を湿害などから守るために土地を掘って嵩上げした堀田と呼ばれる独特の農業が発達しました。
 掘られて出来た堀つぶれでは、田舟の運行だけでなく、貴重な蛋白源となる川魚の漁も行われて来ました。 

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水屋建築
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上げ船


 この堀田の維持には多大な労力がかかる一方で、生産性は低く、米作りは大変な作業でした。 下の2枚の写真は、当時の堀田での営農風景です。

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堀田での営農状況(S22頃)
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堀田を行く田舟


icon 2.営農の近代化と国営西濃用水土地改良事業



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国営西濃用水土地改良事業一般計画平面図
*画像クリックで拡大
2-1 国営西濃用水土地改良事業の実施
 こうした自然や地形の制約を強く受けた農業形態を改善して近代的な農業を展開するため、湛水防除やほ場整備などの基盤整備が昭和30年代から順次、進められてきました。
 中でも農業用水の確保に関しては、河川の水量が少なく、溜池や地下水など水源も不安定であることなどから営農の近代化を阻害する大きな要因となっていました。
 このような状況に対処するため、昭和43年度から昭和58年度にかけ総事業費157億円をもって国営西濃用水土地改良事業が実施され、農業用水が安定的に供給できるようになりました。
 事業では、揖斐川上流の横山ダム(特定多目的ダム)に水源を確保し、中流部に取水施設である岡島頭首工を新設し、用水を農地に届けるために揖東、揖西、西部などの幹・支線水路や水管理施設を整備しました。
 これによって、地域の慢性的な水不足を解消して営農の近代化を図り、営農の合理化を果たすことが出来ました。
 なお、西濃用水の水源は、平成20年5月から、新たに運用が開始された上流の徳山ダム(特定多目的ダム)に振り替えられ、引き続き安定した利水運用が行われています。
 右の図は国営西濃用水土地改良事業の概要図です
 下の写真は、基幹施設である岡島頭首工を上流から眺めたところと、西部幹線水路のトンネルを内部からみたところです。

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新設された岡島頭首工(左)と西部幹線水路(右)

2-2 事業の効果
 以来、西濃地域は岐阜県の穀倉地帯として、米を中心に小麦・大豆を組み合わせた土地利用型複合経営や柿、イチゴなど地域特産品の生産が行われています。

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西濃地域の営農状況 稲刈り(左)と小麦の収穫(右)


 また、かんがい用水を整備することによって、それまで水源として使われ、低下を続けていた地下水が回復してきました。
 今では、街のあちこちで湧く清冽な水を求めて、遠くからも人々が訪れるなど、地域の環境改善にも役立っています。
 湧水など清澄な水を好むハリヨは、かつてこの地域に広く分布していましたが、湧水の枯渇や水質の悪化に伴って急速にその生息域を減し、滅危惧種に指定されています。
 大垣市では、回復した地下水を利用して生育環境を整備するなどの保護に努め、今日再び、貴重な姿を身近にみることができるようになりました。

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湧水池(大垣市曽根城公園内)(上)とハリヨ(下)


icon 3.施設の老朽化と西濃用水第二期事業



3-1 施設の老朽化と市街化の進行
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岡島頭首工エプロンの劣化状況
 右の写真は、国営西濃用水土地改良事業によって造られ、30年以上に亘って使われて来た岡島頭首工のエプロンの姿です。流水によってコンクリートが磨耗して鉄筋が露出し、一部は破断しています。
 このように岡島頭首工は、局部的な劣化が進行するとともに、地震時の耐力が不足しており、放置すれば破損が拡大する恐れがありました。
 幹線水路もまた、長年の使用によって老朽化が進み、亀裂や継手不良などが生じて、漏水事故の恐れが高まっていました。

 現実に漏水による地盤沈下や田んぼの陥没が起こったところも出てきました。

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管水路内部への漏水状況
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堀地表への漏水状況


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管水路上部の宅地化
 さらに、水路周辺の市街化が進んできたことから、住宅密集地で漏水した場合には、住宅への浸水や道路の陥没などの二次災害が起こる恐れが高まっていました。
  右の写真は、かつては農地だった幹線水路の上部に家が立ち並んでいる状況です。


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旧水管理施設
 昭和58年に整備された水管理施設は、耐用年数を大幅に越え、交換部品の供給も無く老朽化による故障や動作不良などが頻発していました。


3-2 国営西濃用水第二期事業の実施とその効果
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西濃用水第二期概要図
*画像クリックで拡大
 こうした状況を改善し、農業用水の安定的な供給と施設の維持管理を軽減するため、農林水産省では、平成21年度から平成26年度にかけて総事業費50億円をかけて「国営西濃用水第二期土地改良事業」を実施しました。
  事業では、岡島頭首工はじめ、揖西、西部、揖東の各幹線水路の改修、水管理施設の更新などを行いました。
  右の概要図の赤色で示したところが事業で改修した施設です。


① 岡島頭首工の改修
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岡島頭首工の堰柱補強
(せん断補強鉄筋挿入状況)
 岡島頭首工では、堰柱の耐震補強として第1、第4堰柱にせん断補強鉄筋を挿入して、大規模地震の発生に備えました。


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岡島頭首工のエプロン改修
 また、コンクリート表面の摩耗によって鉄筋が露出した土砂吐エプロン部は、鉄筋を補修したうえで超高強度繊維補強コンクリートパネルを敷設して、磨耗しにくい構造としました。


 右岸取水口は、流木などのゴミの流入に悩まされてきたため「横搔回転式除塵機」を設置しました。
 この除塵機は、ゴミを掻き揚げずに、回転する「おむすび形」の掻取り歯で下流に流し去るため、ゴミの搬送や塵芥処理などが大幅に減り、維持管理に要する労力が軽減されました。

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塵芥状況(改修前)
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横掻回転式除塵機

揖斐川には、アユやウナギのように海と川とを行き来する回遊魚や、カマツカ、アカザといった底生魚などが生息しています。
頭首工中央魚道は勾配が急で流れが激しいことなどから遡上しにくい状況でした。
このため、魚道の勾配を緩くするとともに、呼び水や、粗石をつけて、より多くの魚類が登りやすい魚道としました。

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改修前の魚道
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改修後の魚道

② 幹線水路の改修
 幹線水路は、老朽化した管水路に鋼管などを挿入して漏水を防いだほか、住宅地に隣接する開水路を暗渠化して、転落事故の危険などをなくしました。

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改修後の管水路
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開水路の改修状況

 地区の西端にある池田山から流れ出る小谷川を渡る西部幹線水路の水管橋は、基礎杭を増し打ちするなどして、大きな地震にも耐える構造としました。

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改修後の小谷川水管橋 全景(左)、継手部(右)


③ 水管理施設の更新
 動作不良などが頻発していた水管理施設は、最新の設備に整備することによって、需要に応じた適切な配水操作が可能となり、用水の安定供給が出来るようになりました。

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改修後の水管理施設 親局(左)、子局(右)


④ 小水力発電及び太陽光発電の整備
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揖西発電所(小水力発電施設)
 また、小水力発電施設を2か所に設置したほか、太陽光発電施設1ヵ所を整備することによって、化石燃料に依存した電力の二酸化炭素排出量を抑えるとともに、売電収入による維持管理費の削減を図りました。


⑤ 地域の住民活動と国営事業
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揖西発電所(小水力発電施設)
 西濃地域では、生き物調査や田植え体験など、地域の水、生き物、景観を体験し、ふるさとの自然や農業を学ぼうという催しが、行政や学校、ボランティアの手で開催されており、国営西濃用水第二期事業でも積極的に支援してきました。
 「田んぼの生き物調査」では、水路で採取した生き物たちを通して、地域の生態系や環境との繫がりなどを学びます。


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お米の収穫体験
 「お米の収穫体験」では、地元の農家の方をはじめ、市やJAの指導の下、地域を挙げて活動に取り組み、子供たちが田植えや稲刈りなどを体験し「農」について学びます。


 農家の人たちによる水路やあぜ道の草刈り風景です。この地域では田んぼ周辺のゴミ拾いなどの清掃活動が、多面的機能支払い制度などによって日常的に行われています。

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多面的機能支払交付金による活動状況


池田町を流れる東川の清流には、ほたるが生息しており、毎年この季節には町で「ほたる祭り」が開催されます。
 ききょう太鼓などのイベントはもちろん、多くの屋台が出揃い、沢山の人で賑わいます。

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多くの人で賑わうほたる祭


icon 4.水の恵みを明日へつなぐ



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改修を終えた岡島頭首工
 右の写真は、事業で改修を終え、機能を回復した岡島頭首工と、そこから取り入れた水が流れる幹線水路を空から眺めたところです。この下流には、下の写真のような優良農地が広がっています。
西濃地域に広がる農地と水の流れ、そこで営まれる農業と生息する多くの生き物。
長い歴史をかけて築かれた地形や文化、生態系が織り成す景観は、地域の大切な宝物です。
国営西濃用水第二期土地改良事業は、この宝物を活かして明日へとつなげるために実施されました。
事業によって、農業用水が安定して供給され、農業の競争力強化と地域の活性化が図られることが期待されています。


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西濃地域に広がる農地