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 すでに明治3年、政府は、「開墾局」なる特別な組織を設け、全国の開墾に関する事務を掌握しようとしていました。何故ここまで新政府が士族の開墾にこだわったのかという疑問に関しては、士族授産の代表的研究書である吉川秀造著『士族授産の研究』(昭和17年)に、以下のような理由があげられています(現代語訳)。


1.士族に多少なりとも農地を所有させることは、(他の政策に比べて)彼らの生活を安定させる最良の方法であった。 2.営農は商工業に比べて深い経験や機敏な商略、特殊な技術等は不要であり、労働力のみである程度の成績が可能であった。 3.士族の農地所有は、兵農分離以前の状態に戻すことであり、新政府の方針である封建制度打破の精神に合致していた。 4.当時は、藩政時代以来の商工蔑視、農本主義が残存しており、士族に開墾を勧め、農耕に就かせることは、商工業に就かせるよりも容易であった。

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