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次世代の水利資産[新濃尾農地防災事業]
次世代の水利資産[新濃尾農地防災事業] 次世代の水利試算
新濃尾地区計画概要図
新濃尾地区計画概要図
大江排水路(宮田用水)
木津用水路
羽島用水路
 さて、木曽川と濃尾平野をめぐる歴史の断片をいくつか紹介してきました。
 現在、この地では、国営総合農地防災事業が進められています。先の濃尾用水事業が完了してから30年の歳月が流れ、各施設は老朽化による機能の低下が目立ってきました。
 犬山頭首工の補修、宮田導水路9.8km、木津用水路3.9km、羽島用水路18.1kmの改修を行っています。さらに都市化によって降雨に対する流出量が増大しているため、大江排水路16.7kmの改修を行っています。
 各用水路のパイプライン化(地中埋設)される個所は、公園や緑道として整備される予定です。

 尾張平野は都市化が進行し、かつて命がけで守った水路の存在を知る人も少なくなりました。しかし、約1000年の歴史を持つ大江用水は、今も流れを変えることなく尾張平野を潤しています。
 今も木曽川の水は、あたかも血管のごとく、この広大な濃尾平野の生命を支えています。

 おそらく100年後、200年後も、この川と平野のかかわりは絶えることなく続いていくでしょう。
 そして、今現在、私たちの気付かない新たな川の危機が深く進行しているかも知れません。
 ひのきをはじめ多くの木材を生み出した木曽の美林は、かつてのような需要は望めそうにありません。山が荒れれば、当然のことながら、その影響は川にもあらわれます。
 地球の温暖化や近年の少雨傾向も、予測できない事態を引き起こす前触れかもしれません。 
 
 そして何より、農業の衰退は、ひょっとしたら取り返しのつかない事態を招いているのかも知れません。

 その危機は、おそらく私たちが木曽川の歴史を忘れた頃やってくるに違いありません。

 御囲堤は姿を消しました。輪中の面影も今では探すほうが難しくなってきました。宝暦治水の堤防跡には、薩摩藩士が涙ながらに植えたという千本松原が美しい並木を作っています。
 1000年にわたり営々と先人が築き上げてきた、この平野のかけがえのない水利網。
 遺[のこ]すべきではないでしょうか ――― 次世代の濃尾平野に。

●参考文献
『宮田用水史』宮田用水普通水利組合
『宮田用水史・新編』宮田用水土地改良区
『木津用水史・改組編』木津用水土地改良区
『入鹿池史』入鹿用水土地改良区
『蘇北排水改良』岐阜県蘇北普通水利組合
『羽島用水改良』岐阜県羽島郡中部普通水利組合
『畑繋堤に関する郷土誌』羽島用水土地改良区
『木曽川水系農業水利誌』(社)農業土木学会
『岐阜県耕地事業沿革史』岐阜県経済部
『岐阜県土地改良史』岐阜県農政部農地計画課
『木曽川用水史』水資源開発公団・愛知県・海部土地改良区
『輪中と治水』岐阜県博物館
『尾張の大地』 川博
 
 
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