狩猟[しゅりょう]の時代。そして、農耕という富の発生。
その富を集め、雅[みやび]を競った時代。
刀というむき出しの本能が火花を散らした時代。
ある階層だけが生きられるように仕組まれた時代。
その解放とともに噴き出した歴史の膿[うみ]。
突き詰めれば、これらすべては「農の矛盾」の
時代的噴出[ふんしゅつ]ではなかったか。
農は国の大本[おおもと]なり。
こうして改めて歴史を振り返れば、
鮮明に浮かび上がってくるひとつの真実[こと]がある。
私たちは、先人が創造[たがや]した大地の上で生きている。
同じ日本という土[くに]の上で暮らしている。
同じ陽が照り、同じ雨が降り、同じ作物を耕作している。
時代は変われど、人が土を耕して
食糧を得るという営みそのものは、
太古も今も、未来永劫[えいごう]、変わりようはない。
そして、歴史は教えてくれる。
土に立つ者は倒れず
土に活きる者は飢えず
土を護る者は滅びず
安政6年生まれの農学者、
横井時敬[ときよし](※1)の言葉である。
※1熊本生まれの農学者。後に東京帝国大学教授、東京農業大学学長などを歴任。日本と西欧の農学を受け、「明治農法」といわれる新分野を開拓した。上の教訓は、手取川七ヶ用水土地改良区の事務所に掲げられている。