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平成18年度、那賀川平野に広がる用水網は、「那賀川用水」として農林水産省が実施した「疏水百選」に選ばれている。徳島県では唯一の選定であった。

疏水百選は、日本の農業を支えてきた全国の代表的な用水の中から、110箇所を選定したものである。広く国民からインターネットとハガキ・FAXによる投票を受け付け、その後の選定委員会による評価と合わせて選定を行った。

那賀川平野の農業関係者からも多数の投票があったことであろう。


 ともあれ、この平野に生きた先人の功績が全国的な評価を受けたということは喜ぶべきことであり、誇るべき名誉でもあろう。しかし、現実の那賀川用水は、はたして疏水百選の名誉にふさわしいかどうか。

水路へ流れ込む生活排水や道路端から投げ込まれるゴミ ――― 他の多くの地域と同じように、この平野でも都市化や混住化が進むにつれ、あるはずのない光景が日常的な風景となってしまった。昔の用水路や自然河川を利用して整備された那賀川用水は、用水路と排水路が兼用となっており、水質は下流ほどに悪化し、稲作に支障をきたしている地区も少なくない。

また、川を治めたとは言っても、この地域の自然条件は変わるはずもなく、那賀川は今も数年おきに激しい牙をむく。


 明治に築造された大西堰、そして昭和29、30年と同時期に完成した南岸、北岸の統合堰はこの激流に耐えてきたものの老朽化が進み、今やボロボロの状態である。

さらに近年、渇水が頻発するようになってきた。

こうした背景から、水利施設の抜本的改修を図る地元関係者の強い要望に応え、「国営総合農地防災事業」が採択された。農林水産省では平成8年度より事業を実施している。


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 家庭からの生活排水やゴミで汚れた南岸用水。都市化や混住化の進んだ地域では、空き缶やビニール袋など、道路端からのゴミも目立つ。

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 北岸用水へと流れ込む家庭からの生活排水。水質は下流にいくほど悪化し、稲作に支障をきたしている。

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 ひび割れの目立つ南岸用水。南岸用水、北岸用水とも築造から長い年月を経ているため、水路自体の老朽化、損傷も顕著に現れている。

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 大西堰・中央部堤体工の破損状況。明治の築造以来、台風や大雨などで度々破損と修築を繰り返しており、機能、安全性の低下がみられる。

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 南岸堰・下流エプロン工の破損状況。本体の老朽化に加え、那賀川の河床低下や洪水による護床の破損がみられる。この他、魚道や舟通しの老朽化も顕著。

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 北岸堰・流筏路の破損状況。護床の破損や舟通しの老朽化もみられるほか、導水トンネルや土砂吐の老朽化も進んでいる。

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