第六章:大地の改良


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総合開発とは、文字どおり総合的な開発であり、農地のみならず河川、橋や道路、港湾、あるいは大規模工業基地、高度教育やレクリエーションなど、国土条件から社会生活の基盤にいたるまで幅広く同時的に整備していくことである。


とりわけ、農業は他の産業に比べ土地の占有率が高い。つまり、それだけ自然からの影響を受けやすい。と同時に、自然、あるいは国土に与える影響も大きい。


畑作経営の新しい地平-それは単に営農条件の整備だけでなく、自然との調和や国土保全の機能をも含めた、いわば水田に対抗し得る高度な土地利用体系を築き上げることである。


まず、大地そのものの根本的”改良”が必要であった。


戦後の土地改良事業の発展は目覚ましいい。事業の体系や名称は複雑だが、おおむね以下の5つに大別される大地の改良がなされた。


□排水と客土


これは明治期からすでに国費を投じて実施されてきた。当初は、水害の防止や湿地の開拓が目的であったが、寒冷地にあっては排水による地下水位の低下が作物の生育に大きな効果をもたらすことが明らかになった。排水によって通気、通水性が良くなり地温も上昇、土中微生物の活動を促すなど、とりわけ泥炭地や重粘土層における効果は著しい。寒冷地農業の必須事業をなった。工法には、河川整備や排水溝の掘削(明渠(明渠)排水)と、地中に土管を埋め水を抜く(暗渠(あんきょ)排水)の2種がある。一方、土壌によっては排水と同時に土の有効成分も失われ地力の低下が生じるため、性質の異なる土を混入して土壌の改良を図る(客土(きゃくど)事業)。あるいは、土の深い層まで掘り起こすこと(心土破砕(しんどはさい))によって土壌物理性を変化させる事業も展開された。


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□かんがい


網走地方は国内で最も雨量の少ない地域であり、作物の生育期間である5月~9月の雨量は400mm程度に過ぎない。干ばつに強い作物が栽培されているが、農地保全のためにも様々な作物との輪作体系が望まれる。畑地かんがいとは、スプリンクラーなどで散水するシステムであり、干ばつ防止や作物の生育促進のみならず、風蝕害(ふうしょくがい)の防止にも効果がある。また、液肥や除草剤の散布、家畜糞尿やデンプン廃液等の畑地還元にも利用されている。


一方、水田も大部分が撤退したとはいえ、北見地域では4000ha弱を維持している。冷害を克服するため、深水(ふかみず)かんがいや温水ため池などによる水温上昇といったかんがい方式が開発された。


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□農地の区画整理


北海道の農地はアメリカの開拓方式の導入もあって独自の区画がなされてきた。しかし、農業技術は当時の馬耕(ばこう)から、大型機械へと変貌し、当然農地の形状もそれに応じた区画が求められようになってきた。とりわけ、この地域は一戸あたりの耕地が大きいため、大型機械の効率化を図る区画形状に改良する必要がある。道路や排水路、防風林、さらには自然条件や営農体系をも考慮した独自のほ場整備が必要となってきた。


□農用地造成と改良山成工(やまなりこう)


農用地開発の技術は、開拓者の苦労話も風化してしまうほどの飛躍的進歩を遂げた。しかし、網走地方は全体に起伏が激しく、後発の開墾は傾斜地など条件が悪いところにならざるを得ない。丘陵地の畑作は、常に土壌浸食の危機にさらされている。雨や風によって表土が流出し、場合によっては海にまで悪影響をもたらす。また、機械の事故やロスも多い。近年、改良山成工(やまなりこう)という傾斜地の整備がなされ、効果をあげている。


□総合事業


以上のような事業に加え、農道や公園整備、あるいは農村の生活環境や自然環境整備など、その地区に必要な事業を総合一環的に実施し、その事業効果を飛躍的に高めようというものである。


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